米Googleは現地時間12月11日、AIを活用したWebブラウザの実験プロジェクト「Disco」と、その中核機能である「GenTabs」を発表しました。
Discoは、日々のインターネット利用で多くの人が感じている
「タブを開きすぎて、どこに何があるのか分からなくなる」
といった悩みを、AIの力で少しでも軽くすることを目的とした新しい試みです。
調べものをしているうちに、
・タブが増えすぎて整理できない
・同じ情報を何度も探してしまう
・本来やりたかった作業に集中できない
このような状態になった経験がある方は、決して少なくないでしょう。最近では、こうした状況を「タブ疲れ」と呼ぶこともあります。
Google Discoは、このタブ疲れに対して、AIを使って情報を整理し直すという新しい考え方を提示しています。
本記事では、Google Discoとはどのようなサービスなのか、その中核となるGenTabsの仕組みや特徴、そして私たちのWebの使い方がどのように変わる可能性があるのかを、専門知識がなくても理解できるように解説していきます。

Google Discoとは?

Google Discoは、Googleが運営する実験的な取り組み「Google Labs」から公開された、AIを活用した新しいWeb体験のプロジェクトです。
普段多くの人が使っているGoogle Chromeのような完成されたブラウザとは異なり、
Discoは「これからのWebの使い方」を試すための実験的なサービスとして位置づけられています。
そのため、現時点では
・機能が発展途中であること
・今後、仕様や使い方が変わる可能性があること
こうした前提を理解したうえで利用する必要があります。
Discoの目的は、単にWebページを見ることではありません。AIを使って、情報を整理し、活用しやすくすることで、ユーザーの作業そのものを助けることにあります。
公式サイトの情報はこちら
Discoの特徴:タブを「目的別」にまとめる
Discoの大きな特徴は、ブラウザで開いている複数のタブを、一つひとつ個別に扱うのではなく、「目的ごと」にまとめ直す点にあります。
例えば、旅行の計画を立てているときには、
・ホテルを調べているページ
・飛行機や移動手段のページ
・観光スポットを紹介する記事
といった複数のタブを同時に開いていることが多いでしょう。
Discoでは、こうした関連するタブをAIがまとめて整理し、「旅行計画」という一つの作業単位として扱えるようにします。
このとき作られる、作業専用のまとめ画面が「GenTabs」です。
GenTabsとは何か?
GenTabsとは、Discoの中でAIが作成する、目的別の情報整理画面です。
今開いているタブや、Disco内で入力した指示内容をもとに、AIが「今、何をしようとしているのか」を読み取り、その目的に合った形で情報を整理します。
難しい操作や専門知識は必要なく、「旅行の計画をまとめたい」「勉強用に情報を整理したい」といったように、普段使う言葉で指示を出すことができます。
ただし、GenTabsはあくまで実験的な機能です。
一度の操作で完璧に整理されるとは限らず、内容を確認しながら調整して使うことが前提となります。
なぜ「タブ疲れ」は起きてしまうのか
そもそも、タブ疲れはなぜ起きるのでしょうか。
多くの場合、原因はとてもシンプルです。インターネットで調べものをするとき、私たちは次のような行動をとりがちです。
・気になるページをとりあえず新しいタブで開く
・あとで読むつもりで閉じずに残しておく
・別の情報を探して、さらにタブを増やす
こうしてタブが増えていくと、
・どのタブが何の情報だったか思い出せない
・必要なページを探すだけで時間がかかる
・同じ内容を何度も検索し直してしまう
といった状態になります。
問題なのは、ブラウザのタブが「情報を並べるだけ」で、「目的ごとに整理してくれない」点です。旅行、勉強、仕事、買い物など、本来は目的ごとに分けて考えたいのに、タブはすべて横一列に並んでしまいます。
Google Discoは、この部分にAIを使って手を入れようとしています。
GenTabsは何をしてくれるのか
GenTabsは、開いている複数のタブをそのまま並べ替える機能ではありません。
AIが行うのは、主に次のようなことです。
・開いているページの内容を読み取る
・それらに共通するテーマや目的を推測する
・目的に合った形で情報をまとめ直す
例えば、旅行に関するページをいくつも開いている場合、AIは「この人は旅行の計画を立てているのではないか」と判断します。
そのうえで、
・ホテル情報
・移動手段
・観光スポット
といった形で情報を整理し、一つの画面で確認しやすいようにまとめます。これにより、「あの情報、どのタブだったかな?」と探し回る必要が減ります。
現在の利用条件とアクセス方法
Google Discoは、現時点では誰でも自由に使えるサービスではありません。
あくまで実験段階のプロジェクトとして、限られた条件のもとで公開されています。
現在の利用条件は、次のとおりです。
・macOSを利用しているユーザーが対象
・Google Labsのページからウェイトリストに登録する必要がある
・登録後、招待された人のみが利用できる
ウェイトリストに登録したからといって、すぐに使えるとは限らず、実際に利用可能になるまでには時間がかかる場合があります。
また、Discoは実験的なサービスであるため、
・機能や画面の構成が予告なく変更される
・一部の機能が使えなくなる、または終了する
・提供条件そのものが変わる
といった可能性もあります。
そのため、日常的な作業の中心として使うというよりも、「新しいWeb体験を試すもの」として利用するのが現実的です。
実験的サービスとしての注意点
Discoは「完成された製品」ではありません。
そのため、利用する際にはいくつか注意しておきたい点があります。
まず、AIによる整理や提案は便利ですが、必ずしも正確とは限りません。
・情報の解釈がずれる
・要点の抜けや誤解が生じる
・期待した形で整理されない
といったことは、十分に起こり得ます。
また、Discoはユーザーの開いているタブの内容をもとに動作します。
そのため、
・何を開いているか
・どんな指示を出すか
によって、結果は大きく変わります。「AIが全部やってくれる」と考えるよりも、「整理を手伝ってくれる道具」として使う意識が大切です。
どんな人に向いていそうか
Google Discoは、すべての人に必要なサービスとは限りません。
特に向いていそうなのは、次のような人です。
・調べものをするときに、いつもタブが増えすぎてしまう人
・旅行や勉強、比較検討など、複数のページを同時に扱うことが多い人
・AIを使った新しいWeb体験を試してみたい人
一方で、
・シンプルにWebページを見るだけで十分な人
・安定した動作を重視したい人
にとっては、今すぐ必要なものではないかもしれません。
Discoは、「効率を大きく上げる道具」というより、「将来のWebの使い方を先取りして体験するもの」と考えると、期待とのズレが少なくなります。
Chromeとの違いをどう考えればいいか
ここまで読んで、「将来的にChromeはいらなくなるのでは?」と感じた方もいるかもしれません。
しかし、現時点でGoogle Discoは、Chromeの代わりになる存在ではありません。Chromeは、安定性や互換性を重視した完成されたWebブラウザです。
一方のDiscoは、AIを使うことでWebの使い方がどう変わるのかを検証するための、実験的なサービスです。
そのため、
・Chromeは日常的に使うためのブラウザ
・Discoは新しい体験を試すための実験場
という役割の違いがあります。
今後、Discoで得られた知見や仕組みが、ChromeをはじめとするGoogleのサービスに取り入れられる可能性はあります。ただし、それはあくまで将来的な話であり、現時点でChromeが置き換えられるわけではありません。
この点をはっきり理解しておくことで、Discoに対する期待と現実のズレを防ぐことができます。
まとめ
Google Discoは、米Googleが発表したAIを活用した実験的なWebブラウジングプロジェクトです。
開きすぎたタブをそのままにせず、目的ごとに整理し直すことで、
情報との向き合い方を変えようとしています。
その中心となるGenTabsは、
・複数のページをまとめて扱える
・自然な言葉で指示できる
・元の情報源を確認しながら使える
といった特徴を持っています。
一方で、Discoはまだ実験段階のサービスであり、
完璧さや安定性を求めるものではありません。
AIを「すべて任せる存在」ではなく、「考える手助けをしてくれる存在」として使うことが、Discoをうまく活用するコツと言えるでしょう。
これから先、Discoで試された仕組みが、ChromeをはじめとするGoogleのサービスにどう活かされていくのか。その変化をいち早く体験したい人にとって、Google Discoは興味深い存在になりそうです。


