WebサイトのリニューアルやURLの変更を行った直後、「アクセスが激減した」「検索順位が圏外に飛んでしまった」というトラブルに直面するケースは後を絶ちません。
これらは決して運が悪かったわけではなく、301リダイレクトという処理を忘れていた、あるいは設定を間違えていたことが原因であることがほとんどです。
この記事では、Webサイト運営における命綱とも言える301リダイレクトについて、専門用語が苦手な方にもわかるように解説します。なぜこの設定が必要なのか、設定しないとどのような損失があるのかを正しく理解して、あなたの大切なWebサイトを守りましょう。

- 301リダイレクト=Web上の「転送届」
- 設定しないと起きる「2つの巨大な損失」
- 301リダイレクトがもたらす効果
- よくある間違い:「301」と「302」の違い
- 1. .htaccessファイルで設定する方法(最も一般的)
- 2. WordPressで設定する方法(初心者におすすめ)
- 3. その他のCMS(Shopify, Wix, BASE等)の場合
- 1. ブラウザのアドレスバーで目視確認する
- 2. ステータスコードが「301」か確認する
- 3. Google Search Consoleで確認する
- ケース1:リダイレクトされない(古いページが表示される)
- ケース2:画面が真っ白になる、または「500エラー」が出る
- ケース3:「リダイレクトが繰り返し行われました」と表示される
301リダイレクト=Web上の「転送届」
301リダイレクトを一言で表すと、Webサイトの引っ越しに伴う転送届です。
現実世界で引っ越しをした際、郵便局に転送届を出さないと、あなた宛の手紙は旧住所に届いたまま迷子になったり、宛先不明で差出人に戻されたりしてしまいます。
Webサイトも全く同じです。 ページのURL(住所)が変わったのに何もしなければ、ブックマークから来たユーザーや、検索エンジンは「ページが見つかりません(404エラー)」という行き止まりの画面に突き当たります。
そこで301リダイレクトを設定します。これを設定しておくと、古いURLにアクセスした人を、自動的に新しいURLへ転送してくれます。ユーザーはURLが変わったことに気づかないほどスムーズに、正しいページへたどり着けるようになります。
設定しないと起きる「2つの巨大な損失」
競合サイトや専門書では難しく書かれがちですが、301リダイレクトをやらないデメリットはシンプルに以下の2点に集約されます。
1. ユーザーをガッカリさせてしまう(機会損失)
あなたのサイトをブックマークしていた人や、過去のブログ記事のリンクを辿ってきた人が、突然エラー画面を見せられたらどう思うでしょうか。「このサイトはもう閉鎖したのかな?」と思い、二度と戻ってこないかもしれません。これは大きな機会損失です。
2. 今までのSEO評価が「ゼロ」になる(資産の喪失)
これが最も恐ろしい点です。Googleなどの検索エンジンは、長い時間をかけてあなたのページの信頼度(ドメインパワーや被リンクの評価)を蓄積しています。
リダイレクト設定をせずにURLを変えるということは、Googleに対して「今までの実績あるページは削除しました。そして、この新しいURLは今日生まれたばかりの新人です」と伝えることと同じです。
つまり、長年積み上げてきたSEOの評価(資産)を自ら捨ててしまうことになります。一度失った評価を元に戻すには、また長い年月がかかります。
301リダイレクトがもたらす効果
正しく301リダイレクトを設定することで、以下のメリットが得られます。
ユーザーを迷わせない
古いURLにアクセスしても、一瞬で新しいページが表示されるため、ユーザーにストレスを与えません。
SEO評価(順位)を引き継げる
ここが最大のポイントです。301リダイレクトはGoogleに対して「ページが恒久的(永久)に移動しました。これまでの評価もすべて新しい場所に引き継いでください」というメッセージを送る役割を果たします。 これにより、URLが変わっても検索順位を落とすことなく、サイト運営を続けることができるのです。
よくある間違い:「301」と「302」の違い
設定時によくある質問が、「302リダイレクトではダメなのか?」という点です。どちらも転送する動きは同じですが、検索エンジンへの意味合いが全く異なります。
ここを間違えるとSEO評価が引き継がれないため、以下の基準で使い分けてください。
301リダイレクト(Moved Permanently)
意味:恒久的な移動(もう元の場所には戻らない) SEO評価:新しいURLに引き継ぐ 使う場面: ・サイトのリニューアル ・ドメインの変更 ・httpからhttpsへの変更(常時SSL化) ・URLの正規化(wwwのあり・なし統一など) ・記事の削除や統合
302リダイレクト(Moved Temporarily)
意味:一時的な移動(いずれ元の場所に戻る) SEO評価:元のURLに残る(引き継がない) 使う場面: ・数日〜数週間のメンテナンス画面への誘導 ・期間限定のキャンペーンページ ・A/Bテストでの一時的な振り分け ・システムトラブル時の一時避難
基本として、「完全に引っ越すなら301、一時的などの理由がない限り302は使わない」と覚えておけば間違いありません。
【実践編】環境別・301リダイレクトの具体的な設定手順
301リダイレクトを設定する方法は、Webサイトがどのような環境で作られているかによって異なります。
大きく分けて以下の3つのパターンがあります。
- Webサーバーの設定ファイル(.htaccess)を直接編集する
- WordPressのプラグインを使用する
- 利用しているCMSやカートシステムの管理画面から設定する
それぞれの方法について、初心者の方でも迷わないように解説していきます。
1. .htaccessファイルで設定する方法(最も一般的)
一般的なレンタルサーバー(Xserver、ConoHa、さくらのレンタルサーバなど)を使用している場合、この方法が基本になります。.htaccess(ドットエイチアクセス)というサーバーの設定ファイルを編集します。
作業前の絶対的なルール:バックアップをとる
.htaccessファイルは非常に繊細です。たった1文字、半角スペースが1つ抜けただけでも、サイト全体が真っ白になり表示されなくなる(500エラー)可能性があります。
編集する際は、必ず元のファイルをコピーしてパソコン上に保存(バックアップ)しておいてください。もしエラーが出ても、バックアップした元のファイルに戻せばすぐに復旧できます。
基本の記述方法
.htaccessファイルの一番上(または推奨される記述場所)に、以下のコードを記述します。
パターンA:特定のページだけURLが変わった場合
例:old-page.html から new-page.html へ転送したい
<IfModule mod_rewrite.c> RewriteEngine On RewriteRule ^old-page.html$ /new-page.html [R=301,L] </IfModule>
パターンB:ディレクトリ(フォルダ)ごと変わった場合
例:/blog/ 以下の記事をすべて /news/ 以下へ転送したい
<IfModule mod_rewrite.c> RewriteEngine On RewriteRule ^blog/(.*)$ /news/$1 [R=301,L] </IfModule>
パターンC:wwwのあり・なしを統一する場合(URLの正規化)
例:www.example.com へのアクセスを example.com に統一したい
<IfModule mod_rewrite.c> RewriteEngine On RewriteCond %{HTTP_HOST} ^www.example.com$ [NC] RewriteRule ^(.*)$ https://example.com/$1 [R=301,L] </IfModule>
※ドメイン部分はご自身のサイトURLに書き換えてください。
2. WordPressで設定する方法(初心者におすすめ)
WordPressを使用している場合、わざわざ危険な.htaccessファイルを直接編集する必要はありません。安全かつ簡単に設定できるプラグイン「Redirection」を使う方法が最もおすすめです。
プラグイン「Redirection」の使い方
手順1:プラグインをインストール WordPressの管理画面から「プラグイン」→「新規追加」へ進み、「Redirection」と検索してインストール・有効化します。
手順2:セットアップ 初回のみセットアップ画面が表示されます。基本的にはすべてそのまま「次へ」進んで設定を完了させてください。
手順3:リダイレクトルールの追加 「ツール」→「Redirection」を開き、画面上部(または新規追加ボタン)にある入力欄に以下のように入力します。
ソースURL:古いURL(転送元) ターゲットURL:新しいURL(転送先)
例として、/old-page/ から /new-page/ に転送したい場合は以下の通りです。
ソースURL:/old-page/ ターゲットURL:/new-page/
最後に「転送ルールを追加」ボタンを押せば設定完了です。これだけで301リダイレクトが機能します。
3. その他のCMS(Shopify, Wix, BASE等)の場合
WordPress以外のCMSや、カートシステム(ECサイト作成サービス)を利用している場合、.htaccessファイルは触れないことがほとんどです。
その代わり、多くのサービスでは管理画面内に「リダイレクト設定機能」が用意されています。無理にコードを書こうとせず、各サービスの専用機能を探してください。
主要サービスの設定場所の目安
Shopify(ショッピファイ)の場合 管理画面の「オンラインストア」→「メニュー」→ 右上の「URLリダイレクト」から設定できます。
Wix(ウィックス)の場合 ダッシュボードの「マーケティング・SEO」→「SEOツール」→「URLリダイレクトマネージャー」から設定できます。
BASE(ベイス)の場合 App(拡張機能)として「リダイレクトApp」などが提供されている場合があります。まずは公式のヘルプページで「リダイレクト」と検索してみましょう。
Jimdo(ジンドゥー)の場合 クリエイタープランなどの一部プランでは、管理メニューの「SEO」項目の中に設定箇所があります。
CMSユーザーが確認すべきチェックポイント
どのようなツールを使う場合でも、以下の3点は必ず確認してください。
- 転送先は正しいか? トップページに何でもかんでも転送するのはNGです。内容が関連しているページへ転送設定しましょう。関連するページがない場合のみ、トップページやカテゴリページへ転送します。
- 無限ループしていないか? 「ページA」を「ページB」に転送設定したのに、別の設定で「ページB」を「ページA」に転送していないか確認してください。お互いに転送し合い、ページが表示されなくなります。
- ステータスコードは301になっているか? ツールの仕様によっては、デフォルト(初期設定)が「302(一時的)」になっている場合があります。必ず「301(恒久的)」を選択しているか確認してください。
【確認編】設定が正しくできたかチェックする方法
リダイレクトの設定作業が終わったら、必ず動作確認を行います。 設定したつもりでも、記述ミスや保存忘れで機能していないケースは意外と多いものです。以下の3つのステップで確認してみましょう。
1. ブラウザのアドレスバーで目視確認する
最も簡単な確認方法です。
- ChromeやSafariなどのブラウザを開きます。
- アドレスバーに、リダイレクト元の「古いURL」を入力してEnterキーを押します。
- 画面が切り替わり、アドレスバーの表示が自動的に「新しいURL」に変われば、転送自体は成功しています。
もし、古いURLのまま画面が変わらなかったり、エラー画面が表示されたりする場合は、設定が反映されていません。
2. ステータスコードが「301」か確認する
上記の目視確認だけでは、それがSEO評価を引き継ぐ「301」なのか、一時的な「302」なのか判断できません。ツールを使って、内部の信号(ステータスコード)をチェックします。
確認には、無料で使えるオンラインツールを利用するのが手軽です。「リダイレクトチェック」と検索して出てくるツールや、ohen.toなどのサービスを使用します。
- ツールに「古いURL」を入力してチェックボタンを押します。
- 結果画面に「301 Moved Permanently」と表示されれば合格です。
もしここで「302 Found」と表示された場合は、WordPressプラグインの設定や、CMSの設定画面で「転送の種類」が間違っていないか再確認してください。
3. Google Search Consoleで確認する
Googleがサイトをどう認識しているかを確認する、最も確実な方法です。
- Google Search Consoleにログインします。
- 画面上部の検索窓(URL検査ツール)に、「古いURL」を入力します。
- 「ページのインデックス登録」という項目を確認します。
ここに「URLはGoogleに登録されています」ではなく、「ページはインデックスに登録されていません:リダイレクト」や「URLはリダイレクト先にあります」といった表示が出ていれば、Googleは正常にリダイレクトを認識しています。
うまくいかない時のトラブルシューティング
「設定したのに動かない」「エラーが出てサイトが見られなくなった」という時によくある原因と対処法をまとめました。
ケース1:リダイレクトされない(古いページが表示される)
最も多い原因は「ブラウザのキャッシュ」です。 ブラウザは一度表示したページを記憶(キャッシュ)しているため、設定変更後も古い記憶を表示してしまうことがあります。
対策: 「シークレットモード(プライベートブラウズ)」でアクセスしてみてください。これで正しく転送されるなら、設定は成功しています。通常のブラウザでも時間が経てば反映されます。
ケース2:画面が真っ白になる、または「500エラー」が出る
これは.htaccessファイルの記述にミスがある場合に起こります。全角スペースが混じっていたり、スペルミスがあったりしませんか?
対策: 焦らずに、バックアップしておいた元の.htaccessファイルをアップロードして、一度元の状態に戻してください。その後、記述内容を再確認して修正します。
ケース3:「リダイレクトが繰り返し行われました」と表示される
これは「無限ループ」と呼ばれる状態です。 例えば、「ページA」を「ページB」に転送設定しているのに、別の設定で「ページB」を「ページA」に転送してしまっている場合などに起こります。あっちへ行け、こっちへ行けと命令がループしてしまい、表示ができなくなっています。
対策: 転送設定を見直し、行き先が堂々巡りになっていないか確認してください。特に、WordPressのプラグインとサーバーの.htaccessの両方で設定している場合などに競合して起こりやすいミスです。
301リダイレクトはいつまで設定しておくべき?
「リダイレクト設定はいつか解除してもいいのですか?」という質問をよくいただきます。
結論から言うと、可能であれば「半永久的」に残しておくのがベストです。
Googleのジョン・ミューラー氏は、過去に「少なくとも1年間は維持すべき」と発言しています。検索エンジンが新しいURLを完全に認識し、評価を移し替えるのには時間がかかるためです。
しかし、1年経ったからといってすぐに設定を消してしまうと、以下のようなリスクがあります。
外部のWebサイトやブログが、あなたの古いURLに対してリンクを貼ってくれているかもしれません。リダイレクトを解除すると、そのリンクからの流入がすべてエラーになり、せっかくの被リンク効果も消えてしまいます。
サーバーの負担になるなどの特別な事情がない限り、リダイレクト設定はそのまま維持し続けることを強くおすすめします。
まとめ:301リダイレクトでWebサイトの資産を守ろう
WebサイトのリニューアルやURL変更は、サイトを成長させるためのポジティブな変化です。しかし、適切な処理を行わないと、過去の積み上げを失うことになりかねません。
301リダイレクトは、一見すると技術的で難しそうに見えますが、その本質は「ユーザーと検索エンジンへの思いやり」です。
古い住所を訪ねてきてくれた人を、迷わせることなく新しい住所へ案内する。 このひと手間を惜しまないことで、あなたのWebサイトは信頼を維持し、新しい環境でもスムーズに成果を出し続けることができます。
この記事の手順を参考に、ぜひ正しいリダイレクト設定を行ってください。



